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2007年5月 6日 (日)

小児救急:失敗から学ぶ

 昨年カスペというひどい番組をみていたら、「子供を心配で救急に連れて行ったらなんと研修医だった」というフレーズがありました。確かに患者さんの立場からみればおっしゃるとおりと思いました。

 十分な小児のトレーニングを受けていない研修医に小児救急の単独診療をさせる病院もあるかとは思いますが、(小児救急に限らず大人の徒歩来院の救急であっても)安全管理体制に問題があるかと感じます。(電話報告だけというのも危険な場合があります。やはり自分で診てみないとわからないときがあるのです。私は研修医の先生のバックアップをするときはあきらかな風邪などを除いてなるべく自己紹介と簡単な診察をするようにしていました。)

名だたる研修病院でも単独診療を可能にしている病院では研修医の見逃し症例による訴訟などがよく報告されます。

 日本の行政を含めて徒歩来院する患者さんは軽症だという強い思いこみがありますが、間違っていると思います。もちろん統計的にいえば徒歩来院の人は軽症が多いのですが、その数字にだけにとらわれてはいけません。風邪が10名続く中で髄膜炎を見逃さないようにするのは、実は救急車で頭痛・発熱で運ばれてくる人から髄膜炎を見逃さないよりもはるかに難しいからです。

 以前にも書きましたが小児救急において大事なのはもちろん患者さんの全体的な印象なのですが、そこにしかフォーカスをおかないと多くの過ちを犯しかねません。今の施設の小児救急部長の先生が20年近く診療してきた中で体験した見逃し症例を元に講義をしてくれる機会がありました。2歳未満児の虫垂炎・嘔吐のみの虐待・発熱嘔吐のみで帰宅時にはアイスを食べられた児の髄膜炎などでした。どれもなかなか診断が難しそうなケースです。自分の苦しんだ体験を次の世代のためにシェアしてくれる彼を尊敬しました。

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小児救急のおとし穴 Book 小児救急のおとし穴

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やはり小児救急は難しいなあと家で悶々としていると昔買ったのによんだことのない本が出てきました。著者の先生のとてつもなく豊富な臨床経験から出てくるさまざまな症例や考察に唸りました。とってもすごい本です。

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 最新の文献を読んで知識をアップデートするのも大事なですが、安全管理の視点から見逃し症例から一生懸命勉強すること、失敗を流したままにせずMandMでしっかりと検証し次につなげることの重要性を強く感じます。(時に矢面に立たされると辛いですが)

 同僚の失敗を聞いて明日はわが身と思い謙虚に勉強する気持ちを忘れないようにしたいと思います。(同僚の失敗を「私ならやらない」という発言をする医師の診療は危険な印象があります。私の尊敬する臨床医の多くは火が広まらないように未然に手を打とうとする人が多いです。)

なんだかいつもどおりまとまらない文章で失礼しました。

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コメント

しへい先生、こんにちは。徒歩来院の人ほど難しい、というのは同感です。救急車で来院すればこちらも隙がないように構えていますが、徒歩来院の人ほど、びっくりする落とし穴がたまにあります。でも、その「たまの」落とし穴を避けるべく守りに入ってしまうと、過剰検査になってしまいます。医療って本当に難しいですね。

tanu先生コメントありがとうございました。医療崩壊と訴訟地獄(明快な基準なく結果が悪いと刑事事件にされかねない。)日本の現状で救急をやるのはかなり勇気がいります。警察に容疑者として尋問されるわけなので(米国のように弁護士は要求できない。)そんな中で医療経済と自分の身を守ることのバランスを取るのはとても難しいですね。医師患者関係を保ちカルテをしっかり書いて、論文に基づいた医療をすることくらいしか方法はないでしょうか。
経験のある救急医の方が検査が増えるという人もいますね。

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