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2007年7月24日 (火)

人の習性:内科ICU

こちらにきて忘れてしまいがちな薬が止血剤(アドナ・トランサミン)やめまいの薬(メイロン・アデホス)そして去痰薬などなどでしょうか。基本的にはいろいろと試してみたけれど十分な証拠がないから使わないというのもありますし、しっかりとデザインされた臨床研究がないというのもあると思います。

成人でも小児でも日本では風邪薬が出されます。患者さんも来院して薬がないのは悲しいし、医療者も何か薬を出したいので私は出していました。こちらでは小児の風邪には解熱剤のみです。(病院からは出ません。OTCで買います。)去痰薬・咳止めは臨床研究を行ったが良い結果がでなかったというのが根拠のようです。親御さんとしては何か薬がほしいとは思うのでその心情を考えると何も病院から薬がでないということに少し疑問も覚えます。

日本にいたときはあまりよくないこととしりつつ日本でしか使わない薬に関しては製薬会社の方に採用根拠となった論文と一番最近の二重盲検による臨床研究の資料をお願いしていました。結果としては採用根拠の論文は基礎医学的にメカニズムを解説したもの最近の二重盲検の臨床研究はなく専門家の解説集が送られてくることが多かったです。それゆえ外来や入院で自己完結できる場合はこれらの薬は使わず、専門科にコンサルトする場合が予想される場合は使っていないと怒られるか不勉強扱いを受けるので使うようにしていました。そして研修医の先生には自分の集めた資料と自分の考えを伝えました。加えて自分の病院でのローカルスタンダードとワシントンマニュアルに書いてあるような必要最低限のどの病院でも通用しそうなスタンダードの両方を勉強するように強調していました。その大事さは自分の治療に疑問符を投げかけられたとき、ほかの病院に移ったときにわかるのですが、実践してくれていたかなあ。。。

膵炎のように消化器科がみたり救急がみたりする疾患では人や科によってあまりに治療法が違うため、消化器の全スタッフに相談して合意形成された治療指針をつくりそれにのって治療をするようにしていました。将来的には最新の知見に基づきアップデートするつもりでしたが、その前に病院を移ることになってしまいました。

長い前置きでしたが私が今回書きたかったのはARDSに関しての私の施設の集中治療医をみていて思ったことです。

http://square.umin.ac.jp/jrcm/page019.html

少し古いですがこの資料はとてもよくまとまっています。(前にも紹介しました。)

NOや持続的体位変換は良い結果は得られていませんが、いわゆる標準と呼ばれている治療を行っても酸素化が改善しないときはNOをしたり持続的体位変換を行ったりします。そんな様子をみていると人間は病気の患者さんをみているときにこれ以上有効な手段がないとわかっていてもじっと耐えることがつらく何か行動を起こして医療者自身の心の均衡を保ちたいものなのだと改めて思いました。かくいう私も同じように行動するでしょう。

http://www.bmj.com/cgi/content/abstract/bmj.39139.716794.55v1

参加しているMLでご紹介いただいたNOに関する論文です。

2007年7月17日 (火)

内科ICU2

毎朝のスケジュール

530起床

600出発

630頃ICU

3-4名の患者のプレラウンドをします。夜間のイベントを当直の医師や夜勤の医師から確認。パソコンでバイタルサインや検査データ、電子カルテの確認をして研修医は手書きなので紙のカルテをしあげます。可能な限り翌日の検査やコンサルトのフォロー、薬のオーダーをラウンド前に済ませます。

800-830

シニアレジデントやフェローによってICUに関する基礎知識の講義があります。人工呼吸器・院内感染・鎮静の仕方・ショックなどがありました。内科ICUのイントラネットにパワーポイントのスライドがありそれを彼らが予習して講義することになっています。

830-930

指導医(通常米国ではアテンディングといいますが私の施設ではコンサルタントといいます)のラウンド。ICUのカンファレンスルームで研修医がプレゼンしその日のプランを作ります。薬剤師・看護師のその日のリーダーも参加して行っています。

大画面に患者の検査値やデジタル化されている患者のバイタル表(投与薬剤・人工呼吸器設定・in/outバランスや体重も含めて殆どのデーターが一つのアプリケーションにまとまっています。)を移しながら行います。議論の中で決まったオーダーはその場でパソコン上で入力されます。

ICUチームのラウンドの時間に血液内科・移植外科などのICUにケアを依頼しているチームや感染症内科・内分泌科などICUからのコンサルトを受けているチームがカンファレンスルームを訪れてはお互いの方針を確認します。

930-1030

座ってのラウンドが終わったら全員でベッドサイドにいって今日の方針を確認しつつ担当の看護師・家族と話し合います。指導医はこの間に患者の診察をします。

1030-

各研修医は自分のTodoを終えてから再集合し、当直の研修医に申し送りをして12時前には病院から帰ります。

その分当直の研修医は結構忙しいことになります。そこは米国みんな割り切って早く帰って自分の時間を楽しもうとコンセンサスがあります。

指導医は1週間ごとの交代でその間は24時間オンコールです。大体朝・午後・夜とラウンドをして9-10時に帰っています。新入院や容態が変わっときにシニアやフェローから電話で報告・相談で起こされますが、よほどのことでない限り病院にくることはありません。

多くのマンパワーを割いて運営される米国のICUですが、それによって内科・外科ともに重症患者をもった担当科の医師が疲弊することが防がれている感があります。ICUの指導医も自分が担当の週は忙しいですがそれ以外の週は内科なら外来のみ麻酔科なら手術室のみなため疲弊することはありません。

日本の医療費は削られるばかりなのでこのような贅沢な環境になるのは難しいと思いますが、患者の安全という観点を一番に考えるとこのよう体制は参考になると思います。

※日本では救急医学と集中治療の境目は大分曖昧(良い意味で)ですが、米国では救急と集中治療は全く別組織のためICUの医師がERに降りていくということは殆どありません。急患の対応は全て救急の医師によります。

2007年7月16日 (月)

内科ICU

今月はまたICUのローテーションです。米国の救急医学のプログラムは不可欠なローテーションは存在しますがそれ以外はある程度プログラムの裁量に任されているところもあります。

私のプログラムの特徴はICUのローテーションが多いことです。一年目に外科混合ICUで一月と外傷腹部外科ICUで一月の計二ヶ月、二年目に小児ICUで一月・内科ICUで一月・外傷腹部外科をシニアで一月の計三ヶ月となります。合計五ヶ月のICU研修をレジデンシーで行います。割と多いほうだと思います。それだけいろんなICUがあるということもあるのだと思います。施設全体には計200床のICUがあるとのことです。

二つある内科ICUのうちの小さい方をローテーションしています。メインは内科ですが、病院の事情もあり術後の患者さんも結構管理します。内科のケースは血液内科・腫瘍内科で免疫不全・化学療法の副作用などでかなり複雑な状態になった患者さんが多いです。

このローテーションで特に気付いたことは感染症内科医の臨床能力です。毎週担当になる指導医は変わりますが、かれらの臨床医としての能力の高さにおどろかされます。ある意味ICUチームのアセスメント不足のようなところを彼らに結構助けてもらっている感があります。(日本ではこんな贅沢な環境は珍しいのでありがたいなあと思います。透析のことも、感染症のことも、殆どの手技も自分でやるのが日本の良いところなのですがそれによる難しさもある気がします。)

色々と医療費の高さや専門馬鹿など批判の多い米国の医療ですが、専門科が高いレベルで協力し合うことによって提供されるオーガナイズされた集中治療は評価に値すると思います。

各科によって定員が決まっているためある程度人気のある施設では一定数の研修医が常にローテーションするためICUの労働環境は日本ほど苛酷ではありません。

2007年7月14日 (土)

EMS-4

EMSでとても大事なのはメディカルディレクターでしょう。

プレホスピタルプロバイダーのためのプロトコール作成とオンライン・オフラインのメディカルコントロールが主な仕事と理解しています。

勉強不足で日本にメディカルディレクターになるためのコースがあるか知りませんが、米国にはあります。

http://www.naemsp.org/

上記はEMSディレクターの救急医たちの集まりです。

http://www.bostonems.com/meddir/EMS%

上のリンクにEMSのフェローシップのカリキュラムの抜粋があります。災害医療・毒物に対する対応(HAZMAT)などのコースを受けることも大体求められているようです。

EMSの月に以下の二冊を斜め読みするように心がけました。

例によって英語の方はあんまり進ませんでした。  ^^;

病院前救護とメディカルコントロール Book 病院前救護とメディカルコントロール

著者:日本救急医学会,厚生労働省,厚労省=,総務省消防庁
販売元:医学書院
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Book Prehospital Systems and Medical Oversight

著者:National Association of Ems Physicians (U. S.)
販売元:Kendall Hunt Pub Co
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米国でレジデンシーを終えた医師でEMSのフェローシップに進むのは将来EMSディレクターになることを決めた人が多く、一般の救急医はレジデンシーだけでトレーニングを終えることが殆どです。

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何年かして日本に帰ったら沖縄時代の尊敬する上司の先生がやっていたように、救急隊の人たちと顔の見える関係を気付けるように定期的に勉強会をしたいと思っています。

子供が大きくなって少しゆとりが出たらJMTDRの勉強もしてみたいと思います。(そんな日がいつかくるのか想像もつきませんが)

http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/shiryo/hyouka/kunibetu/gai/k_enjyo/ke03_01_0202.html

一般の救急医として在野でやっていこう思っている私にとってEMSのフェローシップに進む可能性は少なそうです。

2007年7月13日 (金)

失敗から学ぶ3

「賢者は他人の失敗に学び、凡人は自分の失敗に学ぶ」

他人の失敗を対岸の火事と思ったり、失敗の原因を分析して次に役立てようとせず忘れ去ろうとしたり隠そうとしたりすることは結局自分の将来の失敗を防ぐことにならず同じことを繰り返す原因となるのでしょう。

ER・救急のトラブルファイル―診察室のリスクマネージメント Book ER・救急のトラブルファイル―診察室のリスクマネージメント

販売元:メディカルサイエンスインターナショナル
Amazon.co.jpで詳細を確認する

本当に恥ずかしい話ですが米国で研修しているにもかかわらず英語は相変わらず苦手なままです。語彙も少なく非常に限られた中で会話しています。ということで原著を読もうとして途中でギブアップしてしまいました。

そんな折の私の尊敬する二人の先生がこの本を翻訳して下さったということで買いました。日本語は楽で比較的早く読めました(あー、本当はだめなのでしょう...)。

それにしても素晴らしい内容でいろいろとためになりました。全て起こりそうな失敗でありボタンの賭け違いが大きな結果を招いています。救急医独特のリスクマネージメントの感覚を磨いていくにはとても良い本だと思います。

最終章の小児の症例にも色々と考えさせられることがあります。
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日本でも同様の本は出ています。正に名医というしかない生坂先生が一般外来ではありますが、同様の著書を出されています。

少し疾患の分布は違いますが一般外来に来る患者さんは救急外来にもくる、わけであり間口を広く勉強することは役立つと思います。

見逃し症例から学ぶ日常診療のピットフォール Book 見逃し症例から学ぶ日常診療のピットフォール

著者:生坂 政臣
販売元:医学書院
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それにしても、「うーん、わからない。自分ならまた見逃してしまったという症例ばかりです。」恐ろしい。診断がつかなかった場合にどのような人的・もの的リソースを利用して解決していくかを大事にしていかないといけないと感じました。

ERで役立つ本

2007年7月11日 (水)

アーミッシュ ブータン

http://www.amish-tours.com/

ドイツやスイス地方から宗教上の理由を主なこととして北米に移り住んだ人たちです。ルーテル派と近いとのことです。彼らのコミュニティが近くにあるために見学ツアーにいってきました。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%BC%E3%83%9F%E3%83%83%E3%82%B7%E3%83%A5

彼らはいわゆる文明の産物を選択的に受け入れています。自動車には乗らず馬車、電気は使わないもちろん電話もなし。

彼らのコミュニティのガイドをしているおばさん言わせると

「文化と自身の宗教を守るために子供にあえて知識や教養をたくさん教えないようにしている。限られた知識と経験の中でとても満たされた生活をしているように見える。」

とのことです。これを聞いてブータンを思い出しました。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%96%E3%83%BC%E3%82%BF%E3%83%B3

大学生の頃友人が

「開発途上国の人たちに文明の良さを伝えた方が良いに決まっている!」といったときに「そーかなー」と思いましたが、そんな私の疑問を解決する国がブータンのようでした(いってみたいですがいったことがありません。)。日本人の西岡さんという人がとても素晴らしい貢献をされたことをテレビで知ってとてもうれしい気持ちになりました。

http://www.amazon.co.jp/%E3%83%96%E3%83%BC%E3%82%BF%E3%83%B3%E7%A5%9E%E7%A7%98%E3%81%AE%E7%8E%8B%E5%9B%BD-%E8%A5%BF%E5%B2%A1-%E4%BA%AC%E6%B2%BB/dp/4757150091

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幸せとは難しいものです。自分が決めることなのであって所有物などで決まるものではないのですが物質文明に生きると「もの」に追われてしまいがちになります。

2007年7月10日 (火)

PALS

を先月受けました。思い返すとPALSを受けるのも三回目となりました。成人と同様、CPRの有用性が強調されていました。また年齢や体格に応じて薬やジュールを調節されました。

小児の心肺蘇生は頻度が低いため常に病院全体で予行演習や関わる可能性があるスタッフはPALSを受けなくともその知識をもって復習をしていることが大事と思います。

http://www.armstrongmedical.com/ami/item.cfm?itemid=755&sction=3&sbsection=14

ブラズロテープに批判的な人もいるようですが、小児ICUなどを除き一般病院の救急外来で急に計算して必要な薬剤量・ジュールを出すというのは現実的でないためPALSでもブラズローテープは推奨されています。

ブラズロテープとサイズ別の容器と薬剤を準備して予行演習を定期的にやっていることがいざというときに「あー良かった」となるのだと思います。逆にこれらの備えがない救急外来での小児心肺蘇生はかなり厳しいものになると思われます。

http://www.vidacare.com/Products/index_4_29.html

米国では手で入れる骨髄輸液だけでなく電動で入れるものも使われています。成人にも使え、とても簡単なため救急外来にあるととても便利なのではと思います。

2007年7月 9日 (月)

集中治療のコース

http://www.sccm.org/SCCM/FCCS+and+Training+Courses/FCCS/

Fundamental Critical Care Support Course というコースがありました。二年目に外科・外傷ICUをシニアでローテートするのですがそのために必要なコースです。

集中治療のイロハを3日間で学ぶという、まあ乱暴な目的のコースですがそれなりに得ることが多かったです。日本でICUで働いていたときにも色々と上司の先生から教わっていましたが、短いとはいえ系統だって講義を受けるのは悪くないかと思いました。

外傷外科のスタッフの先生が意外と集中治療のことを勉強していて印象が彼らの印象が良くなりました。

二年目には内科ICU・小児ICU・外傷ICUの三ヶ月があります。無事三つが終わってオンコールのない生活になれることを祈っています。頑張って新版ICUbookを読み終えたいところです。

The Icu Book Book The Icu Book

著者:Paul L. Marino
販売元:Williams & Wilkins
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ERで役立つ本はこちら

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