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2007年9月29日 (土)

小児救急って難しい1

と私は思っています。できる先生に言わせると二ヶ月くらい回ってSickかそうでないかがわかればいいということなのですが。どうもいろんな小児や親を診るたびにますます難しく感じるものです。

http://pediatrics.aappublications.org/cgi/content/abstract/88/3/450

泣き止まない子供がきた場合にどうしたらいいのか、というのは結構真剣な問題です。自分も今核家族ですが、子供が30分くらいくずっていると「とほほ、どうしたらいいのかなあ。」と思います。

上記の論文はそんな我々非小児科医救急医へ良いアドバイスになると思います。分子レベルの現象の解明の論文も本当に素晴らしいですが、頭を抱えている臨床医の日常の疑問を解決する論文もこれまた素晴らしいものです。

しっかりオムツのところをみてHair tourniquetの除外・直腸診・角膜染色・鎖骨など骨格の注意深い診察・中耳炎や口内炎の除外などを含めた系統的な診察を行って以上がみつからない、そして救急外来にいる間に泣きやんだ、ケースでは深刻な細菌感染はあまりないというように理解しました。

検査では尿検査がやる価値があるけれど他はそんなに費用対効果が高くないとのことです。日本で乳幼児にカテーテルで導尿しようとすると恐らくご両親の反感が強いと思いますから、信頼度の低い採尿バッグでやるしかないと親御さんと妥協することになるのでしょうね。地味に直腸温を測っていなくて実は熱だったということも結構あるのだと思います。

こちらの小児救急医はたとえ泣き止んでいても直腸診をして腸重責でないかを除外しようとします。なかなか短期間でいろいろなピットフォールを身に着けるのは難しそうだと改めて思います。

そういう意味で月3-4回小児救急のシフトが三年間あり季節の変化や虐待など社会的な問題・先天性疾患の子供の救急などいろいろなバラエティに遭遇できる私の研修は結構恵まれていると改めて思っています。

2007年9月25日 (火)

よりよい救急医療のために

最近日本で救急患者の受け入れに関する問題が報道されておりそれに関して毛のある議論ができればと思っての文章です。私はこの原因に激変する医療状況に全く医療に関する法律と行政がおいついていないことがあると思います。報道はここに焦点を当てずに個人や病院を批判しますが、正にこの姿勢は
「竹槍でB29で挑む。失敗の個人非難。」
など不毛なものと感じています。枠組みひずみから生じる問題をトカゲの尻尾きりのように末端を批判することで満足しても何も生まれてこないであろうと思うのです。

またメディアのかたには一方的な報道だけでなくウェブを使うなどして自身の記事に双方向性を保ちそれによって報道の質を上げることを是非やっていただきたいと思います。

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私は昔官僚と話していて
「日本の医療の質は夜になると大分落ちる」
という話題になったのを思い出します。しかしそこに大きな問題意識があったようには残念ながら思えないのです。

私が今のように中途半端な形の救急医なろうと思ったのは少なくとも窓口だけにでもなれる医師になることで医師個人の能力によって救急搬送を断る医師にならならいようにしたいと思ったからです。

以下長文ですがお時間のある方はお付き合いいただければと思います。
「たらい回し」とメディアに報道される問題に対する解決策
1)
各科専門医になる後期研修の各病院における定員を定める。全国的に一括管理する。(医師偏在問題への多少の解決も期待されます。)

2)(上記の対策で専門医数が確保されたなら)
救急病院のうちに患者を断らないことを前提とする病院を作る。

3)
断らない病院が必要な救急医・各科専門医を維持することができるように保険点数上の優遇もしくは補助金を決める。

4)
安定した患者を救急病院から転送を受ける病院は条件が満ちた場合24時間必ず受け入れることを義務化する。

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1)
専門医になるために必要な経験数をしっかりと定めるとおのずと一つの病院で一年に養成できる専門医数は決まります。人気のある科に20人研修にくるという驚くべき状況は全国的に各科の専門医の質を保つために各病院の専門科に入れる後期研修医の数を決めて維持していくことで防げるでしょう。
これによって人気のある科にいきたかった人もその科の定員に入れなければ第二希望に行きます。受験や入社と同じ考えです。
専門医の資格はあるが経験数が少なすぎて実は独り立ちできないという問題もおのずと解決されます。

2)
上記が達成された段階で救急病院の中に「救急を断らないことを前提」とするクラスの大規模病院を認定します。
参考とする法律は米国のEMTALAです。下記リンク参照。
http://www.emtala.com/law/index.html
十分な救急医・専門医がいる状況で満床などの理由を問わずにまずは患者を受け入れて安定化させることを義務付けます。
現状では満床なのに患者を受け入れることは医療法違反とも言えるのではないでしょうか。応召義務の医師法と医療法は相反するのだと思います。このような不備をそのままにして現場の医療者病院をただ悪者にすることは不公平と思います。

3)
たとえ十分な各科専門医がバランスよく揃っていても救急を断らず
に受け入れ続けるには相当の数の救急医・コメディカルが必要です。また日本の救急外来・病棟の規模では断らずに受け入れることでとたんに病床は満床になるでしょう。それを解決する24時間のソーシャルワーカーが必要となります。そのために必要な病院を支える予算・法律を規定せずして、精神論や地方自治体の自助努力に訴えることが無理なのだと思います。

4)
結局川の流れの先となる受け入れ病院の空きと受けいれる義務設定する必要があります。さもなくば「断らない救急病院」も夢のまた夢です。

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上記が変わるには大きな時間がかかるでしょう。医師の社会・行政政治・法律・マスコミ・一般市民みなさんがこのような状況を全て医療者の気合や精神論に帰してきたのだと思います。
これらを認識してしかるべき方向に変わる努力が必要なのだと思います。個人批判をしても何も変わりません。

私も自分の意見を述べるだけでなく自分なりに行動できる中ですこしずつできることをやっていきたいと思います。

お忙しいところお読みいただいた方、誠にありがとうございました。未熟者です。ご指導ご批判お待ちしております。

2007年9月24日 (月)

失敗から学ぶ4:素晴らしい先輩から贈物

http://blog.so-net.ne.jp/case-report-by-ERP/

こちらのブログあまりに有名で皆さんご存知かと思いますがご紹介いたします。

まさにERで長年働いていらっしゃる先生が珠玉の症例集をウェブにて公開されています。実際に他の施設で訴訟症例となった病気も取り上げられておりこの難しい時代にどうやって救急医として生き延びていくべきか非常に深い示唆をいただけます。

リスク感覚をやしなうことが大事な救急医にとってこれほど素晴らしい教育の場はめったにないと思います。

いつも色々と勉強と冷や汗の連続で主催者の先生に心より感謝しております。私たちは素敵な先輩を持って幸せです。

2007年9月23日 (日)

頭痛1:シミュレーション

折角の休みの日がつぶれるという悲しいところもありますが、臨床の義務がない中でしっかり毎月4時間シュミレーション教育の時間がある、そして毎週4時間の講義がある、こんな状況はとても幸せなのだと思います。

今月のシュミレーションのテーマは頭痛でした。結構いろいろと作り込んで来ていましたねえ。今回も。

ケースの一つは腰椎穿刺後の頭痛でした。

ステップビヨンドレジデント 2 救急で必ず出合う疾患編 Book ステップビヨンドレジデント 2 救急で必ず出合う疾患編

著者:林 寛之
販売元:羊土社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

米国にきているにもかかわらず林先生の大ファンの私はこのシリーズを愛読しています。本当に素晴らしいですよね。英語の情報も大事だし日本のもの大事、いいものはいいと割り切っています。

P145から正にわかり易く解説していただいていますね。

べベルの向き・細い方がいい・内筒を入れて抜く・Atraumatic needleなど正しく今回のシミュレーションで同じことが強調されました。こちらだとブラッドパッチは麻酔科の仕事ですが、日本でも結構簡単にやってくれるのかなあ。正直硬膜外麻酔は麻酔科のときに何度かやっていますが、合併症も結構あったりして今麻酔の最前線にいないならばやらない方がいいというのが個人的な考えです。

http://www.bd.com/anesthesia/products/spinal.asp

私の施設の救急外来でもこのWhitacareの針を常備しようということになったみたいです。でも大分感覚が違うらしいのでなれない人がやったらまずうまくいかないのだと思います。

今回のトピック頭痛についてまた時間のあるときに続きを書きたいと思います。(同じ反復回数であれば手技に関してはやはり日本人は米国人より才能があるのだと思います。こちらの人たちの基本手技をみていると????ということが多いのが正直な感想です。とはいえ、かれらの経験・教育手法や思考過程には大いに学ぶところがあります。)

2007年9月10日 (月)

総合内科について2

総合的な仕事をする医師の仕事において個人の好むと好まざるに関わらず新しくできた分野であること、Counter cultureとみなされやすいことから、自分自身のアイデンティを維持することはときに困難になります。患者さんから専門が何か?といつも問われ続けること、専門医から好意的否定的など様々なコメントがくることなどが困難の一つなのだと思います。最終的には自分がやりたいと思った仕事への愛着・愛情が大事になってくるのではないかと考えています。

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さてまだ尻の青い若造の私が色々なことを書きましたが、今回は私が会ったことがある信頼する先生が働いていらっしゃる総合的な診療をする医師のいる施設を幾つかご紹介したいと思います。全く網羅的ではありません。あったことがある先生がいる、その人を私が信頼しているという点のみから挙げております。(偏りがございます。)

http://www.ntmc.go.jp/sinryo/ka/24sonai/page001.htm

私が初期研修をした病院です。非常に素晴らしい指導医の先生がいらっしゃり充実しています。毎回自分の外来がある日は、診療後まとめて指導医と今後の方針を確認する議論ができることがとてもいいことだと思いました。時に電話してもう一度救急まできてもらうこともあったそうです。入院病床も充実しており当直ではER的な仕事をすることになります。公立病院なりのフットワークの難しさはあると思います。柿の木坂という立地も魅力の一つです。

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http://www.rakuwa.or.jp/kenshu/otowa/kouki-sogo.html

伝説のM市民病院から多数の素晴らしい臨床家が移籍したところです。あまりに有名でみなさんご存知なのだと思います。最近は京都の公立病院から家庭医の研修をされた総合診療の大御所の先生も移籍されていらっしゃるようです。救急部も総合内科を中心に立ち上がっておりER形式をされているようです。

私の大学時代の同級生の先生が多数のレクチャーや全国講演そして有名著書を出していてまさにバリバリ働いています。感染症・ICU・ER・往診なんでもしっかりとやりたいという欲張りの人に向いているのではと思います。

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http://www.aso-group.co.jp/aih/medical/recruit/staff_kouki_kenshuu.shtml

こちらもあまり有名な研修病院ですね。果たして今更紹介する必要があるのかと考えると確かに。。。なのですが、このブログを読んでいる人にもしかしたら医学生の人がいたらなどと思って書いております。急性期の内科入院管理のマネージメントをしっかりとした指導医と一緒にやりたいという人にうってつけだと思います。当直ではER的な仕事も担当、ICUでの仕事や他科とのコラボレーションも多いと聞いております。指導医の先生方を何人か存じ上げておりますが、本当に素晴らしい先生方です。

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http://www.soshin.umin.jp/

直ぐ近くのメディカルセンターとの密な連携そして教育の提携をしている診療所の充実という面でとても魅力的であると思います。私の初期研修中にお世話になった先生が大学病院にてまた診療所にて活躍されています。総合診療の能力を磨くあたって所謂理論的な面や教育手法・コミュニケーション手法の獲得は非常に大事ですが、やはり地域で患者さんに育てられることが一番重要と理解しています。アカデミックな部分と質の高い診療所での研修がうまく混ざったプログラムだと理解しております。

関東ではHUNTフォーラムというものがあるようです。

「東京家庭医療学センター・うわまち病院・筑波大学総合診療科・筑波メディカルセンター総合診療科のスタッフ・レジデント・研修医が2ケ月に一度あつまり、勉強会と交流会を行います。」

http://family-s.umin.ac.jp/ml.html

家庭医療学会では学生・研修医のためのMLがあります。私もROMですが入っています。

総合内科医でもないものが総合内科の研修を語るという非常におかしな行為をしました。気分を悪くされた方がいらっしゃいましたら心よりお詫び申し上げます。ただ情報提供に少しでもなればという気持ちからです。広い心お許し頂ければと存じます。ご指導・ご意見ございましたら是非よろしくお願いいたします。

2007年9月 1日 (土)

総合内科について1

日本でも米国でも専門医華盛りには変わりはありませんが、どちらかと手技ベースになってくる(内科でも傾向が強い)専門医が多くなってくるとcounter cultureとして手技ベースより患者管理・総合的アプローチ・知識獲得とその吟味などを大事にするべきだという流れが必然的に出てくるのだと思います。仮に総合的な診療をする医師が大半で専門医が足りないのならばやはり専門医がモット増えないといけないという流れが出てきそうな気がします。

良い面もあり難しい面もある日本の歴史的な講座制よりもよりリベラルな生き方を模索する医師が総合的な診療をする方向に流れていく傾向があったのはやはりcounter cultureという性質があったことと関係があったのだと思います。

1970-1980頃、米国では家庭医・総合内科医・一般小児科医・(救急医)が盛んになってきました。日本でも厚生労働省が国費留学で総合診療医を育成を目指したり、文部省が総合診療部の作成に予算をつけたりという流れがありました。

今そのような総合診療黎明期から20年以上が経とうとしているのではないでしょうか。この流れに大きな追い風となったのが新臨床研修ではないかと考えています。初期研修中に頻度の少ない病気を少数みるだけでなく、やはりよくある病気をたくさんみて罹患率を実感しその中で鑑別診断の感覚を磨いていくこと、良くある病気に対する最低限の対処方法を身に着けることなどがコンセンプトなのだと思います。これは正に総合的な診療をする医師に重なります。このコンセプトについて非常に最もであると感じるので私は初期臨床研修の義務化に概ね賛成です。その開始と地域医療の崩壊は関連があると思いますが、そこに地域医療の崩壊の全ての原因を求めることは困難であると思います。地域医療の崩壊はもっと多因子的なものだと思っています。

臨床研修が始まったときにある意味バブルのように研修医という学習者・労働者を求めて多くの病院が手を上げたが、やはりそこで手技ベースでない教育を行える指導医が少なかったということは始まってきて大分実感されている感があります。(かくいう私も上記を正に実感しました。)

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