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2007年9月25日 (火)

よりよい救急医療のために

最近日本で救急患者の受け入れに関する問題が報道されておりそれに関して毛のある議論ができればと思っての文章です。私はこの原因に激変する医療状況に全く医療に関する法律と行政がおいついていないことがあると思います。報道はここに焦点を当てずに個人や病院を批判しますが、正にこの姿勢は
「竹槍でB29で挑む。失敗の個人非難。」
など不毛なものと感じています。枠組みひずみから生じる問題をトカゲの尻尾きりのように末端を批判することで満足しても何も生まれてこないであろうと思うのです。

またメディアのかたには一方的な報道だけでなくウェブを使うなどして自身の記事に双方向性を保ちそれによって報道の質を上げることを是非やっていただきたいと思います。

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私は昔官僚と話していて
「日本の医療の質は夜になると大分落ちる」
という話題になったのを思い出します。しかしそこに大きな問題意識があったようには残念ながら思えないのです。

私が今のように中途半端な形の救急医なろうと思ったのは少なくとも窓口だけにでもなれる医師になることで医師個人の能力によって救急搬送を断る医師にならならいようにしたいと思ったからです。

以下長文ですがお時間のある方はお付き合いいただければと思います。
「たらい回し」とメディアに報道される問題に対する解決策
1)
各科専門医になる後期研修の各病院における定員を定める。全国的に一括管理する。(医師偏在問題への多少の解決も期待されます。)

2)(上記の対策で専門医数が確保されたなら)
救急病院のうちに患者を断らないことを前提とする病院を作る。

3)
断らない病院が必要な救急医・各科専門医を維持することができるように保険点数上の優遇もしくは補助金を決める。

4)
安定した患者を救急病院から転送を受ける病院は条件が満ちた場合24時間必ず受け入れることを義務化する。

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1)
専門医になるために必要な経験数をしっかりと定めるとおのずと一つの病院で一年に養成できる専門医数は決まります。人気のある科に20人研修にくるという驚くべき状況は全国的に各科の専門医の質を保つために各病院の専門科に入れる後期研修医の数を決めて維持していくことで防げるでしょう。
これによって人気のある科にいきたかった人もその科の定員に入れなければ第二希望に行きます。受験や入社と同じ考えです。
専門医の資格はあるが経験数が少なすぎて実は独り立ちできないという問題もおのずと解決されます。

2)
上記が達成された段階で救急病院の中に「救急を断らないことを前提」とするクラスの大規模病院を認定します。
参考とする法律は米国のEMTALAです。下記リンク参照。
http://www.emtala.com/law/index.html
十分な救急医・専門医がいる状況で満床などの理由を問わずにまずは患者を受け入れて安定化させることを義務付けます。
現状では満床なのに患者を受け入れることは医療法違反とも言えるのではないでしょうか。応召義務の医師法と医療法は相反するのだと思います。このような不備をそのままにして現場の医療者病院をただ悪者にすることは不公平と思います。

3)
たとえ十分な各科専門医がバランスよく揃っていても救急を断らず
に受け入れ続けるには相当の数の救急医・コメディカルが必要です。また日本の救急外来・病棟の規模では断らずに受け入れることでとたんに病床は満床になるでしょう。それを解決する24時間のソーシャルワーカーが必要となります。そのために必要な病院を支える予算・法律を規定せずして、精神論や地方自治体の自助努力に訴えることが無理なのだと思います。

4)
結局川の流れの先となる受け入れ病院の空きと受けいれる義務設定する必要があります。さもなくば「断らない救急病院」も夢のまた夢です。

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上記が変わるには大きな時間がかかるでしょう。医師の社会・行政政治・法律・マスコミ・一般市民みなさんがこのような状況を全て医療者の気合や精神論に帰してきたのだと思います。
これらを認識してしかるべき方向に変わる努力が必要なのだと思います。個人批判をしても何も変わりません。

私も自分の意見を述べるだけでなく自分なりに行動できる中ですこしずつできることをやっていきたいと思います。

お忙しいところお読みいただいた方、誠にありがとうございました。未熟者です。ご指導ご批判お待ちしております。

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コメント

確かに受け入れを断らない救急病院つくりは大切です。
各病院の状況を把握する機関も必要です。このようなシステムは日本ではまだ導入にばらつきがあるのでしょうかね。
すべての患者を受け入れるというのは病院の状況次第ではやはり無理があるときもあると考えます。
しかしすべての病院が同時にこうした状況になることはよほどのことがない限り無いと思います。
実際のところ、私の病院では無理と判断された時点で“Diversion”といって救急車の受け入れをせず、他の病院に回すこともあります。
ただ、Diversionというのは大きな事で、その解除のために病院全体で対策に出ますね。

コメントありがとうございます。米国の病院のDiversionはemtalaによって規定されている全ての救急患者・妊婦を受け入れることをある程度実践して限界来たときにたどり着く状態と理解しています。Diversionが長ければ救急部の認定の存続問題になりますから必死でリカバリーするでしょう。日本の場合は、受け入れるべき義務が医師法以外に規定されていないこと、いつになったらDiversionするのかそのデメリットは、など救急医療の実施における基礎的な法制・体制が整備されていないことに問題があると思います。極端な話当直医の守備範囲外であれば救急車を断ることは日本では簡単な話ですが、米国ではEmtalaの違反で相当大きな問題になります。
似ていますがやはり違う問題です。

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