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2008年8月31日 (日)

Airway Course 8月その5

今年もきましたDrLevitan。

本当にすばらしいスピーカーですね。他科ではなく救急出身でAIRWAYの講義をしているところがまたすばらしい。やはり救急での限られた資源や厳しい状況の中どうやって対応するかというのは非常に管理された手術室とは少し違うのではと思います。

とはいえ私も初期後期を合わせて一年近く麻酔科をロテートしましたので救急医にとって麻酔科での修行がとても大事であることは間違いないと思います。

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http://www.theairwaysite.com/

ブリガムのDrWalls(Glidescopeの開発者)のコース

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http://www.airwaycam.com/

今回私の施設に出張できたDrLevitanのコース

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米国の救急医学の気道管理のコースで有名なのは上記の二つです。私は片方しか知らないのでぜひ機会があればもうひとつのDrWallsのコースにも参加してみたいものですが貧乏研修医ゆえコース代1000ドルと旅行費は簡単には捻出できそうにありません。

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両方参加した人によると双方特徴があるようです。

状況に応じた異なるアルゴリズム・状況に応じたRSIの薬剤選択などに強みがあるのがDrWallsのコース。

簡便化されたアルゴリズム。難しいケースに以下に喉頭鏡を使って挿管するかがまず第一でそれでもだめならデバイスという考え。そのため様々な献体に実際挿管したり、いろいろなデバイスを使うことできるのがDrLevitanのコース。

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今回DrLevitanの講義でとても参考になったものを箇条書きします。

・mallanpattiや3-3-2などの気道評価には十分なエビデンスはない。

・気道評価はそれでも必要

(経口ルートは可能か?)

(患者に喉頭や気管の病気はあるか?)

(4Dはあるか?:Distortion, Disproportion, Dysmobility, Dentition)

上記があればawakeで経鼻ファイバー挿管がいいのでは?とのことです。本当ですね。

日本では救急での挿管を経口awakeという施設もありますが、この技術は挿管の経験が少ない医師にとっては理解しがたいところがあって非常に慎重でやさしい挿管テクニックがないとかえって気道に血腫を作ったりということがあると思います。

米国での救急部の挿管の95%以上はストレートなRSIです。

・救急患者では換気が中断してから酸素飽和度が下がる速さはORよりかなり早い。

(私はSpO2が下がり始めたら選手交代が主義です。患者の安全優先です。)

・RSIのときに換気はしないがdogmaだが非常に注意深い優しい換気なら大丈夫。

・喉頭鏡使用時は片手で喉頭鏡もう片方の手は外から喉頭を押してよいポジションを作る。良いポジションに(頭のポジションも含めて)なったら介助者に喉頭の圧迫を引き継ぐ。

・盲目的なBURPやCricoidPressureはむしろ難しさを増やすだけ。

・喉頭鏡で食道と気管の正常像を確認。(これをしらないと丸い穴を間違えて気管と思うことはある。)

Glottis_intubation_2 interarytenoid notchをランドマークに食道には絶対にない。

http://www.airwaycam.com/vidpreview.aspx

・ブジーと同様の直線で先端のみやや軽く屈曲したスタイレットの形がいい。

(あまりに先端の屈曲が厳しいとチューブが進まない。)

(弓状の形は明らかに操作性が悪い。)

http://jp.youtube.com/watch?v=KD8sWBbHHLM&feature=related

・挿管チューブで患者の右口角を広げると視野が良い。

・挿管チューブは咽頭後壁から進めると声帯などの視野をブロックしなくて良い。

・DrLevitanお勧めの挿管用ラリマ 「Air-Q」 FASTTRACKよりも遥かに使い方が簡単で挿入後にファイバースコープで挿管できます。

http://www.cookgas.com/

・DrLevitanお勧めのスタイレットスコープ。私が日本の麻酔科でならったときとの違いは喉頭鏡で咽頭のスペースを必ず確保し咽頭後壁からアプローチしてそのまま声帯を超えて気管を視野に入れてからスタイレットスコープを抜くという方法。

より簡単で理にかなっています。

http://www.airwaycam.com/LevitanFPSScope.aspx

-経鼻挿管-

・経鼻挿管時はフェニレフリンと局麻をしかっりとしたあと経鼻エアウェイで開通を確認。

・エアウェイを入れたらその先からもう一度局麻を噴霧。

・挿管チューブが喉頭にきて換気がチューブからわかったらサイド局麻を噴霧。

・ブラインドなら挿管チューブを使用した鼻腔の反対側に回転し喉頭を椎体側に押す。

・咳ができるならそれにあわせてさもなくば吸気にあわせてチューブを前進させる。

・経鼻ファイバーはブラインドで喉頭直前までチューブを進めてからがもっとも早くて効率的。

・鎮静にはケタミンが良い。

2008年8月27日 (水)

医者は患者から学ぶ 8月その4

「患者こそが医者の教師である」とはよく言ったものです。

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救急部も例外ではありません。最近勉強になった症例。

・ボディスラムされて全身皮下気腫になった症例の気道管理

気道も膨れ上がるので麻酔科やバックアップデバイスなどの準備が不可欠。

・メサドン(長時間作用の合成麻薬)の多量使用でナロキソンの持続点滴

持続量の目安は初期に使った容量の半分/時間

・ヘロイン多量使用時の合併症(肺水腫)

・小児救急部で分娩

お母さんの週数は必ずしも信頼できない。必ず超音波しましょう。

・手の外科との合同MandM 

正中神経反回枝麻痺による母指対立障害(手掌の列創でこの枝のみ障害)

http://www.jstage.jst.go.jp/article/chubu/49/2/49_329/_article/-char/ja

すべての指の屈曲・進展・そして感覚循環がよくても対立だけ障害されることがある。

いろいろと勉強になります。

2008年8月25日 (月)

口述筆記 8月その3

私の沖縄時代の上司の先生が田舎の施設まで訪ねてきてくれました。久々の再会でとても楽しい時間をすごさせていただきました。ありがとうございます。

米国でも音声認識プログラムを使っている施設は多いですが速度が遅かったり語彙が限られたりなどの問題があるようです。

http://www.advanced-media.co.jp/introduction/amivoice.html

AmiVoiceというソフトが日本にもあるそうでいろいろな施設が使っていると聞きました。すばらしいですね。特に電子カルテの施設では活用できそうです。

救急医療は日本の激しく厳しい訴訟社会の中で詳細なカルテ記載が求められるのでこのようなものがあると非常に助かりそうですね。

もし日本に帰ることになったらAmiVoiceを使いたいなあと思った私でした。

2008年8月18日 (月)

シニアシフト:8月その2

早いもので私の米国生活も三年目を迎えました。支えてけれる家族親族友人の皆様に深く御礼申し上げます。

三年目になるとシニアシフトというものが通常のシフトに加わります。シニアは1-2年目の救急レジデントや1年目の他科からのロテーターのプレゼンテーションを聞いて、彼らの初期計画を補足、そして自ら患者を診察します。診察後患者・家族に計画の説明やCode statusの確認。加えるべき治療や検査があれば追加します。

大体の検査や治療が決まったところでシニアは指導医に簡潔に病歴・身体所見・検査結果・現在の治療・入院なら入院するサービス・帰宅ならフォローの計画を報告します。

シニアは自分の担当するエリアでのジュニアの手技をバックアップします。またジュニアが他科コンサルトや入院申し送りで何か助けが必要であれば助けます。

指導医の役目はシニアの計画を補うこと、dictationという口述筆記のカルテを残すことです。

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私が一年目であったころこのシフトをやっていたシニアには実力のばらつきが多くて、実際自分がこの立場にあったらどのようになるのかと思っていました。

やってみると大分忙しい。大体12名くらい最大で収容できるエリアですが、2-3名の医学生のプレゼンを聞いて彼らのバックアップをしながら、外傷がきたら人間関係的に大変な外傷外科との協同作業、そしてそもそもインターンは診療のスピードが遅いので自分で患者を数名診ることがほとんど。めまぐるしい忙しさです。

自分で直接患者を見るのとプレゼンを聞いてからみるのもまた違いあって勉強になるし難しくもあります。ジュニアを指導するに当たって気をつけているのは林寛之先生お勧めの

「何を考えたか?(鑑別診断)」

「何をしたいか?(検査治療計画)」

を訊くことです。単純なことですが忙しいと忘れがちです。彼らもこの過程で学ぶことが多いでしょう。なるべくわかりやすく論文を引用して診療の根拠を示してあげるようにしています。

2008年8月 8日 (金)

RRT:8月その1

皆様RRTってご存知でしょうか。

RT(呼吸療法士)みたいですが違います。Rapid response teamのことです。

米国では患者のバイタルサインに異常があって担当医師が忙しかったり連絡して反応しない場合看護師が患者の安全のためにrapid response teamというチームを呼ぶというシ
ステムが作られつつあります。(多くのメジャーな医療施設ではすでに導入されています。)このチームのことをRapid response teamといいます。

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日本の研修を思い出しても「呼吸不全で数時間以内に恐らく挿管が必要」という病態に患者陥ったとすると

「患者→看護師」

(すぐに医者を呼ぶのがすべての場合と限らない。特に夜間で他の重症患者がいると40名ー50名を2名でみながら重症になりつつある患者を的確に把握できるかは難しい。)

「看護師→研修医」

(主担当研修医がすぐ患者を診に来るタイプとは限らない。当直研修医を呼ぶのか主担当の研修医を呼ぶのか病院のルールが決まっていない。すぐに指導医に連絡するタイプと限らない。)

「研修医→指導医」

(指導医が電話すぐ取るタイプと限らない。とってもすぐ病院に来るタイプと限らない。来てもすぐ決断できるタイプと限らない。)

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RRTのシステムは上記をバイパスして看護師がICUチームを呼ぶ権利とそして目安をもって患者の安全のために行動するものです。非常に理にかなっていると思います。

具体的な基準は施設によって違いますが

・看護師が患者の病態について心配なとき

・頻呼吸もしくは徐呼吸

・頻脈もしくは除脈

・急性かつ持続する酸素飽和度低下

・急性かつ持続する低血圧

・虚血を示唆する胸痛

・脳卒中を示唆する症状

・せん妄を含む意識障害

心肺停止になる患者の多くは何か危険なバイタルサインがその前にあることが多く医師にそのような患者のICUにいくべきかを委ねるだけでなく看護師がICUチームを呼ぶ権利を持つことで結局心肺停止が防がれると考え方と理解しています。実際に統計上の差もあるようです。患者の安全を考える国ならではの合理的なシステムと思っています

難点は米国のICUはすでに満床気味なのに患者を受け入れる場所は?

ICUチームが頻繁に呼ばれてICUの患者は大丈夫?

という点でしょうか。後者については5分以内にICUに運ぶかそれとも病棟でそのまま見れるかの判断をすることがRRTの使命であり、すぐにICUに戻ってくるのが通常です。

RRTの基準はERからのICU入院の基準にも良く使われます。

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