2008年4月 2日 (水)

外傷外科・一般外科ICU:最近の私1

外傷外科・一般外科ICUでのシニアとしての一月もあっという間に終わってしまいました。これでいろいろ合ったICUのローテーション(合計5ヶ月)も終わり、残りは救急部か選択のみとなりました。

あーよかった。ほっとしました。他科ローテーションとなると一から人間関係を築かないといけないのでなんだか疲れます。指導医も科が違うと性格的に方向が大分違う人が多いのであわせるのもまた一苦労でした。

乱暴に気付いたことを書いています。

・米国の指導医の診療も個人差が大きい。

(メジャーな論文くらいは読んでいるのでそこだけはまあ一緒かというくらい。日本の経験ももう大分前になりますが、根拠のない経験診療や勘はこっちでもあるけど日本の方が遥かに多かった気はしますね。)

・家族とのコミュニケーションがいまいち。

(日本でも家族とのコミュニケーションがいまいちな指導医が多くて、研修医時代はその間に挟まれて逡巡したものでした。こちらもよくあります。特にチーム医療のため各チームの言うことの微妙な違いが患者家族の混乱を招きます。これを防ぐためにケアカンファレンスといって週に1,2度各チーム総出で話し合いをします。)

・ジュニアよりも体力的には楽だけど責任は重い。

(これは日本でも同様ですね。夜間の対応の一つ一つにサポートするエビデンスや判断の根拠をしっかり持っていないと翌朝やMandMで痛い目に合います。逆に難しい指導医も上記を抑えていれば話が通じることが多いです。日本では上記を押さえていも、とにかくだめだあ!、という場合もあったような。。。)

・SvO2はよく使う。Swan-Ganzは殆どない。

麻酔科が手術中にバンバンいれるため分野手術の術後ICUではみかけますがそれ以外にはあまりみかけません。

The National Heart, Lung, and Blood Institute Acute Respiratory Distress Syndrome (ARDS) Clinical Trials Network. Pulmonary-artery versus central venous catheter to guide treatment of acute lung injury. N Engl J Med 2006 May 25; 354:2213-24.

このような論文もあるみたいですし、敗血症では救急部で始めたら予後を改善する!?という(ICUでやっても?だった)Early goal directed therapyもありますから、肺動脈カテーテルよりも混合静脈血を測って蘇生の指標とするのがここ数年でますますはっきりしてきたのでしょう。

・看護師のレベル

(個人個人のモチベーションで大分ばらつきがあるのは日米かわららず。勤勉さ・献身的という意味では日本の看護師に軍配があがるか。ただ日本のICUの看護師は忙しすぎてバーンアウト寸前でちょっと一緒に働くのが厳しい方もいらっしゃった。こちらは12時間勤務週三回で日本の看護師の倍以上の給料をもらっているし、採血は採血テクニシャン、人工呼吸器は呼吸療法士といろいろと分業も進んでいているので日本ほどみんなぴりぴりしてはいないです。ページされていってみたらNEJMを根拠に質問しされたときは驚きました。)

・期待していなかったのに?素晴らしい集中治療の指導医に出会った。

(外傷外科の指導医たちはちょっと取っ付きにくい人や癖のある人が多いのですが、その中で非常に教育・研究・臨床・人格・チームワークこれら全てで高いレベルを保つ指導医に出会い驚きました。彼が責任者のときの2週間は計5ヶ月のICUの中で最も素晴らしい教育を提供してもらいました。チームの信頼関係もばっちりで色々と歯車がうまく回って快適でした。仕事における信頼関係の大切さを改めて再確認した瞬間でした。)

2007年7月24日 (火)

人の習性:内科ICU

こちらにきて忘れてしまいがちな薬が止血剤(アドナ・トランサミン)やめまいの薬(メイロン・アデホス)そして去痰薬などなどでしょうか。基本的にはいろいろと試してみたけれど十分な証拠がないから使わないというのもありますし、しっかりとデザインされた臨床研究がないというのもあると思います。

成人でも小児でも日本では風邪薬が出されます。患者さんも来院して薬がないのは悲しいし、医療者も何か薬を出したいので私は出していました。こちらでは小児の風邪には解熱剤のみです。(病院からは出ません。OTCで買います。)去痰薬・咳止めは臨床研究を行ったが良い結果がでなかったというのが根拠のようです。親御さんとしては何か薬がほしいとは思うのでその心情を考えると何も病院から薬がでないということに少し疑問も覚えます。

日本にいたときはあまりよくないこととしりつつ日本でしか使わない薬に関しては製薬会社の方に採用根拠となった論文と一番最近の二重盲検による臨床研究の資料をお願いしていました。結果としては採用根拠の論文は基礎医学的にメカニズムを解説したもの最近の二重盲検の臨床研究はなく専門家の解説集が送られてくることが多かったです。それゆえ外来や入院で自己完結できる場合はこれらの薬は使わず、専門科にコンサルトする場合が予想される場合は使っていないと怒られるか不勉強扱いを受けるので使うようにしていました。そして研修医の先生には自分の集めた資料と自分の考えを伝えました。加えて自分の病院でのローカルスタンダードとワシントンマニュアルに書いてあるような必要最低限のどの病院でも通用しそうなスタンダードの両方を勉強するように強調していました。その大事さは自分の治療に疑問符を投げかけられたとき、ほかの病院に移ったときにわかるのですが、実践してくれていたかなあ。。。

膵炎のように消化器科がみたり救急がみたりする疾患では人や科によってあまりに治療法が違うため、消化器の全スタッフに相談して合意形成された治療指針をつくりそれにのって治療をするようにしていました。将来的には最新の知見に基づきアップデートするつもりでしたが、その前に病院を移ることになってしまいました。

長い前置きでしたが私が今回書きたかったのはARDSに関しての私の施設の集中治療医をみていて思ったことです。

http://square.umin.ac.jp/jrcm/page019.html

少し古いですがこの資料はとてもよくまとまっています。(前にも紹介しました。)

NOや持続的体位変換は良い結果は得られていませんが、いわゆる標準と呼ばれている治療を行っても酸素化が改善しないときはNOをしたり持続的体位変換を行ったりします。そんな様子をみていると人間は病気の患者さんをみているときにこれ以上有効な手段がないとわかっていてもじっと耐えることがつらく何か行動を起こして医療者自身の心の均衡を保ちたいものなのだと改めて思いました。かくいう私も同じように行動するでしょう。

http://www.bmj.com/cgi/content/abstract/bmj.39139.716794.55v1

参加しているMLでご紹介いただいたNOに関する論文です。

2007年7月17日 (火)

内科ICU2

毎朝のスケジュール

530起床

600出発

630頃ICU

3-4名の患者のプレラウンドをします。夜間のイベントを当直の医師や夜勤の医師から確認。パソコンでバイタルサインや検査データ、電子カルテの確認をして研修医は手書きなので紙のカルテをしあげます。可能な限り翌日の検査やコンサルトのフォロー、薬のオーダーをラウンド前に済ませます。

800-830

シニアレジデントやフェローによってICUに関する基礎知識の講義があります。人工呼吸器・院内感染・鎮静の仕方・ショックなどがありました。内科ICUのイントラネットにパワーポイントのスライドがありそれを彼らが予習して講義することになっています。

830-930

指導医(通常米国ではアテンディングといいますが私の施設ではコンサルタントといいます)のラウンド。ICUのカンファレンスルームで研修医がプレゼンしその日のプランを作ります。薬剤師・看護師のその日のリーダーも参加して行っています。

大画面に患者の検査値やデジタル化されている患者のバイタル表(投与薬剤・人工呼吸器設定・in/outバランスや体重も含めて殆どのデーターが一つのアプリケーションにまとまっています。)を移しながら行います。議論の中で決まったオーダーはその場でパソコン上で入力されます。

ICUチームのラウンドの時間に血液内科・移植外科などのICUにケアを依頼しているチームや感染症内科・内分泌科などICUからのコンサルトを受けているチームがカンファレンスルームを訪れてはお互いの方針を確認します。

930-1030

座ってのラウンドが終わったら全員でベッドサイドにいって今日の方針を確認しつつ担当の看護師・家族と話し合います。指導医はこの間に患者の診察をします。

1030-

各研修医は自分のTodoを終えてから再集合し、当直の研修医に申し送りをして12時前には病院から帰ります。

その分当直の研修医は結構忙しいことになります。そこは米国みんな割り切って早く帰って自分の時間を楽しもうとコンセンサスがあります。

指導医は1週間ごとの交代でその間は24時間オンコールです。大体朝・午後・夜とラウンドをして9-10時に帰っています。新入院や容態が変わっときにシニアやフェローから電話で報告・相談で起こされますが、よほどのことでない限り病院にくることはありません。

多くのマンパワーを割いて運営される米国のICUですが、それによって内科・外科ともに重症患者をもった担当科の医師が疲弊することが防がれている感があります。ICUの指導医も自分が担当の週は忙しいですがそれ以外の週は内科なら外来のみ麻酔科なら手術室のみなため疲弊することはありません。

日本の医療費は削られるばかりなのでこのような贅沢な環境になるのは難しいと思いますが、患者の安全という観点を一番に考えるとこのよう体制は参考になると思います。

※日本では救急医学と集中治療の境目は大分曖昧(良い意味で)ですが、米国では救急と集中治療は全く別組織のためICUの医師がERに降りていくということは殆どありません。急患の対応は全て救急の医師によります。

2007年7月16日 (月)

内科ICU

今月はまたICUのローテーションです。米国の救急医学のプログラムは不可欠なローテーションは存在しますがそれ以外はある程度プログラムの裁量に任されているところもあります。

私のプログラムの特徴はICUのローテーションが多いことです。一年目に外科混合ICUで一月と外傷腹部外科ICUで一月の計二ヶ月、二年目に小児ICUで一月・内科ICUで一月・外傷腹部外科をシニアで一月の計三ヶ月となります。合計五ヶ月のICU研修をレジデンシーで行います。割と多いほうだと思います。それだけいろんなICUがあるということもあるのだと思います。施設全体には計200床のICUがあるとのことです。

二つある内科ICUのうちの小さい方をローテーションしています。メインは内科ですが、病院の事情もあり術後の患者さんも結構管理します。内科のケースは血液内科・腫瘍内科で免疫不全・化学療法の副作用などでかなり複雑な状態になった患者さんが多いです。

このローテーションで特に気付いたことは感染症内科医の臨床能力です。毎週担当になる指導医は変わりますが、かれらの臨床医としての能力の高さにおどろかされます。ある意味ICUチームのアセスメント不足のようなところを彼らに結構助けてもらっている感があります。(日本ではこんな贅沢な環境は珍しいのでありがたいなあと思います。透析のことも、感染症のことも、殆どの手技も自分でやるのが日本の良いところなのですがそれによる難しさもある気がします。)

色々と医療費の高さや専門馬鹿など批判の多い米国の医療ですが、専門科が高いレベルで協力し合うことによって提供されるオーガナイズされた集中治療は評価に値すると思います。

各科によって定員が決まっているためある程度人気のある施設では一定数の研修医が常にローテーションするためICUの労働環境は日本ほど苛酷ではありません。

2006年9月 3日 (日)

少しの違いの積み重ね4・5

:トピック4

呼吸療法士

respitory therapist

http://www.aarc.org/

http://www.jaame.or.jp/koushuu/kokyu/k_index.html

日本でも資格があるし(実際に呼吸器からの離脱でいろいろとお世話になりました。)、アメリカの呼吸療法士の資格と業務内容も広く紹介されていると感じています。実際こちらで一緒に仕事をするととても広い内容をカバーしているので凄いなあと思います。

恐らくどの病院でも人工呼吸器関連の仕事やスパイロメトリーなどはやってくれると思うのですが、私の施設は動脈ラインをいれてくれる。(血液ガスはもちろんです。)中心静脈を入れるときの介助をしてくれる、スワンガンツのデータを記録してくれる、膀胱内圧を測定してくれるなどなど非常に多岐にわたっていろいろと仕事をされています。今後もいろいろと呼吸器の設定とか教わっていければと思います。

:トピック5

PICC lines (peripherally inserted central catheters)

日本でも似たようなものを留置したことがあったのですが(グローションカテーテル)、恐らく少し違うのでしょうね。

ICUにはvascular access teamという人たちがいて採血をしてくれます。いわゆるphlebotomistと同じと思います。

さらにPICCを入れる専門のナースがいます。超音波で静脈を探して超音波ガイド下にセルジンガー法でいれています。

PICCと中心静脈の感染率に関しては議論があるようですが、安全であること、採血も可能であるなどいろいろと利点が多いようです。

http://www.chestjournal.org/cgi/content/full/128/2/489

2006年9月 2日 (土)

人工呼吸器など

研修医の頃から人工呼吸器はあまり得意ではありません。よくわからないのでいろいろと調整をしてみたりして勉強してきました。

いろいろと本をめくってみたのですが、今のところこの二冊がいいのではないかと思っています。

(もし良い本がございましたらどなたか是非教えていただけますと幸いです。)

Book よくわかる人工呼吸管理テキスト

著者:並木 昭義,氏家 良人
販売元:南江堂
Amazon.co.jpで詳細を確認する

救急医学の2004年9月増刊号

http://www.herusu-shuppan.co.jp/

こちらも結構知りたいことが乗っている確立が高く気に入っています。

http://www.tycohealthcare.co.jp/divisions/respiratory/division/product_catalog/ventilator/ventilator840.html

こちらのICUではピューリタンベネット840というものを使うことが多いです。いろいろなモードの詳細は参考書ではなかなか対応しずらいところがあり、会社の方に大変申し訳ないのですが、資料を送っていただいて勉強しています。本当にありがとうございます。

http://www2.synapse.ne.jp/insomnia/resp/

こちらのサイトも非常にわかりやすいので研修医のときにちょくちょくみました。

またいろいろなミッキマウスの絵(VCVとPCVの比較)がとてもわかりやすい以下のサイトも胸くうドレーンなど様々な項目がとてもわかりやすく紹介されており勉強になります。

http://www.ne.jp/asahi/nishi-kobe/masui/lecture.html

新しい月を向かえまたあたらなるトホホ生活ですが、またマイペースで頑張ってみようと思います。

2006年9月 1日 (金)

ARDS

ARDSに関して以下のガイドラインを二年前に読みました。

http://square.umin.ac.jp/jrcm/page019.html

少し古くなっていますが、何人かARDSの患者さんを今回のローテーションでみたのでまた読み返してみました。

やはりとても良い内容ですね。勉強になりました。NOを使ったりHFOVを使ったり吸入プロスタグラジンを使ったりと色々なことをやりましたが、「肺が良くなるまで他の臓器の調子を整えて待つ」ということに尽きると今のところ感じています。

予後は若い人の方が良い印象があります。僕が不勉強なだけで実は統計学的に明らかなのかもしれませんが。

2006年8月27日 (日)

少しの違いの積み重ね3

ICU clinical pharmacist

日本でも東京医大のICUで活動されているとこの前学会で伺いました。恐らく他のICUにもいらっしゃるのだと思います。こちらのICUではなくてはならない存在です。血中濃度の測定や抗生物質の適正量・薬剤感受性また相互作用の確認など実に様々な点で頼りになります。そして知識・専門性も非常に高いです。病院によると思うのですがこちらでは中心静脈栄養の計算までやってくれます。

ICUは複雑で高度化していますが、それに対応するように様々なコメディカルが医師の負担を軽くしています。安全な医療にはコストがかかるのだと強く感じます。コストカットばかりではあるが、質・安全への要求が高い日本の医療の難しさを感じます。

ICUのためのトレーニングや専門職の求人もあるようです。

http://www.stanfordhospital.com/clinicsmedServices/medicalServices/pharmacy/criticalCareRotation

2006年8月26日 (土)

少しの違いの積み重ね2

Needleless system

日本でももちろん意識されているし徐々に増えていますが、こちらの徹底ぶりは日本に勝る印象があります。とにかく針がなるべく最小になるように、血液との接触が最小限になるように様々な工夫があります。薬剤を吸うときも、A-Lineのルートも針が少なくまたは血液との接触が少なくなるように工夫されています。

http://catalog.bd.com/bdCat/attributeSearch.doCustomer?priority=0&categoryID=36Posiflow385301

もちろん意識の問題とコストの問題とかいろいろあると思うのですが、徐々に変っていけばと思います。

2006年8月25日 (金)

少しの違いの積み重ね1

Large_volume_infusion_pumps 日本のICUとこちらのICUを比べて思うちょっとした違いを何個か書きたいと思います。以前に臨床研究の豊富さを挙げましたが、今日は身近なところでシリンジポンプです。 日本のものは注射器一本に対して一つの機械が多いですが、 http://toxkrmkorxfmtgxfrofftxfm.trm.swl.med-host.com/terumo/htmls/products/03_yueki-eiyou/070.html こちらのものは一つの機会が3つくらいの薬剤を押せます。 http://www.baxter.com/products/medication_management/infusion_pumps/large_volume_infusion_pumps/colleague/index.html 日本では多数の薬剤を使うにあたってシリンジポンプを取ってくるのが非常に大変ですが、そのストレスが少し少なく感じます。

より以前の記事一覧